ああダメだと、デイヴは根拠もなく感じた。
ステージ上の狂乱とはかけ離れたひどく穏やかな笑みを向けられて、伸ばしっぱなしのくしゃくしゃな金髪の合間から覗く瞳が驚くほど青いことに気付いてしまったその瞬間に、デイヴは己が彼に勝てないことを悟った。
「これ聴いたよ。俺は2曲目が好きだな」
そう言って、カートはもう一度小さく小さく微笑んだ。
それから、惚けたように口を開けたまま棒立ちしているデイヴの手の上に、作ってみたから聴いてくれと数日前にデイヴから渡された彼の自作のテープを乗せると、そのまま部屋を後にした。
カートが出て行って1人残されてもデイヴはその場を動かず、手の平に残されたテープを握り締めて、視界に残る残像を追うようにしばらくドアを見つめ続けた。
ああ、俺の負けだよ神様。
あんな人と出会わせてくれるなんて、あんた何て最高なんだ。